REVIEW
HIU Books
第17回図書館賞
アウシュヴィッツは終わらない : あるイタリア人生存者の考察
この本に出会った場所は、大学の図書館である。この本の良いところでもある“目立たなさ”は、……
この本に出会った場所は、大学の図書館である。この本の良いところでもある“目立たなさ”は、僕らの出会いを運命的なものにした。そう言っても過言ではない。なぜなら、彼は質素な佇まいとは大きくかけ離れた、“中身”を持ち合わせていたからだ。
第二次世界大戦、ナチスドイツ、ユダヤ人、強制収容所、これらの言葉たちを一回は聴いたことがあるだろう。『夜と霧』、『アンネの日記』などを読んだ経験がある人もいるだろう。
これらは、ある時点における特異な歴史的事象(つまり、過去のもの)と解釈されるが、果たしてそうなのだろうか、そういう始まりのもとで紡がれる『アウシュヴィッツは終わらない』は、現代に生きる我々に何かを訴えている気がする。
この本は、人間が人間として生きていくためには何が必要なのかを教えてくれる。人間性を失った人間がどうなっていくのか。絶望の中に光るモノを見せてくれる、パンドラの箱のような本である。